ドビュッシー:弦楽四重奏曲,デュティユー:弦楽四重奏のための《夜はかくの如く》,ラヴェル:弦楽四重奏曲
アルカント四重奏団
〈録音:2009年10月〉
[キングインターナショナル―ハルモニア・ムンディ(D)HMSA0074]SACDハイブリッド
5,500円
「SOLO」
〔マッテイス・Jr:ファンタジア イ短調《Alia Fantasia》,マッテイス・Sr:ヴァイオリンのためのエア集(抜粋),ピゼンデル:ソナタ イ短調、ビーバー:パッサカリア ト短調《守護天使》(ロザリオのソナタより),他〕
イザベル・ファウスト(vn)
〈録音:2020年4月〉
[キングインターナショナル―ハルモニア・ムンディ(D)HMSA0075]SACDシングルレイヤー
5,500円
シューマン:ピアノ四重奏曲,ピアノ五重奏曲
イザベル・ファウスト(vn),アンネ・カタリーナ・シュライバー(vn),アントワン・タメスティ(va),ジャン=ギアン・ケラス(vc),アレクサンドル・メルニコフ(fp)
〈録音:2021年6月〉
[キングインターナショナル―ハルモニア・ムンディ(D)HMSA0076]SACDシングルレイヤー
5,500円
多彩な音色の変化や
精緻な表現がいっそうリアルに
キングインターナショナルから出た、イザベル・ファウストやアルカント四重奏団のSACDを3点紹介する。いずれも、ハルモニア・ムンディからハイレゾ音源をライセンスして、国内でDSDマスタリングを行なったものだ。1枚5500円という値段を安いとは言わないが、SACDというメディアの最高峰と言うべき音が聴ける。
ファウストの参加した2点は、どちらも昨年12月に通常CDで発売されたアルバムだ。今回はシングルレイヤー盤なので、再生には対応プレイヤーが必要となる。シューマンのピアノ四重奏曲と五重奏曲を収めた1枚は2021年の録音で、メルニコフやファウストら、今これ以上望むべくもない顔ぶれが揃っている。聞き慣れた曲がここまで細密に深く聞こえるかという名演だが、SACDで聴くとさらにすばらしい。弦楽器は、美しく溶け合うと同時にそれぞれの存在感があり、メルニコフのフォルテピアノは、多彩な音色の変化がより鮮やかに感じられる。そして、彼ら相互のやりとりは、まるで自分もその会話の輪の中にいるかのように、いきいきと伝わってくる。
ファウストの『ソロ』は2023年の録音で、マッテイス父子やピゼンデル、ビーバーといったバロックの作曲家たちによる無伴奏作品ばかりを収める。ファウストのヴァイオリン芸術の極致とも言うべきアルバムだが、こういうものにはSACDはやはり強い。聴いていると、ときにはやわらかに、ときには冴え冴えと鳴るファウストのヴァイオリンが作り出す無限のニュアンスがスピーカーからあふれてくる。
アルカント四重奏団のドビュッシー、ラヴェル、デュティユーは、それぞれの曲の現代を代表する名演だ。2009年の録音で、2012年に一度シングルレイヤー盤で出たことがあるが、今回はハイブリッド盤での発売となった。通常CDで聞いても見事な演奏だが、SACDではそこに風通しの良さとうるおいが加わり、精緻な表現がいっそうリアルな感触をもって聞こえてくる。
増田良介 (音楽評論)
協力:キングインターナショナル