柴田南雄の名連載『新・レコードつれづれぐさ』第10回の話題はラフマニノフ! 当時の最新録音だったペキネル姉妹の『2台のピアノのための組曲』にはじまり、アシュケナージ&RCO、マゼール&BPOの交響曲録音、そしてその第2番録音史における重要作、プレヴィン&LSOにも筆が及んでいきます。
※文中レコード番号・表記・事実関係などは連載当時のまま再録しています。

才能は煩悩の増長せるなり
ペキネル姉妹のピアノ二重奏でラフマニノフの《組曲第1番・第2番》の試聴盤(グラモフォン28MG0661)が手元に届き、しかし、なかなか暇がとれなくて聴けずにいるうちに、彼女らが来日して演奏会を開く、というニュースを聞いた。それじゃ、先ずナマを拝聴してからレコードを聴きましょうと、酷寒のさなかの2月7日、五反田のゆうぽうとホールに出向いた。じつは、レコードのジャケットで顔写真は眺めていたが、姉妹については何の予備知識も持たず、ただ、ギューヘア/ズューへアという、二人ともウムラウト付きの名前なので、漠然とドイツ人であろうくらいに思って出掛け、席についてプログラムも碌に見ないうち、早くも二人が颯爽と登場して来た。髪が黒いので、一瞬おや、と思ったが、衣裳は一人が黒一色、もう一人が赤一色と、この色彩感覚がいかにもドイツ的なので、やっぱりそうか、しかし、どちらが姉でどちらが妹か、ちょっと見当がつかないなあ、と思いながら1曲目の開始を待った。
このコンテンツの続きは、有料会員限定です。
※メルマガ登録のみの方も、ご閲覧には有料会員登録が必要です。
【ログインして続きを読む】下記よりログインをお願いいたします。