特別寄稿特別企画
追悼・クリストフ・フォン・ドホナーニ

ドホナーニの生涯とディスク5選
“知性派”が遺した広範なレパートリーを聴く

文:満津岡 信育(音楽評論)

高名な祖父エルンストの教えを受け
ドイツから演奏活動を始める

2025年9月6日、クリストフ・フォン・ドホナーニ(Dohnányi, Christoph von)が95歳で世を去った。コロナ禍以降、指揮活動からは、実質的には引退していたとはいえ、その喪失感ははかりしれないものがある。

1929年9月8日生まれのドホナーニは、高名な音楽家エルンスト・フォン・ドホナーニの孫にあたり、ミュンヘンで音楽を学んだ後、アメリカのフロリダで祖父からも教えを受けた。フランクフルト歌劇場で、祖父の弟子であったショルティのもとで練習指揮者を務めて、プロの音楽家としてのキャリアを踏み出し、リューベック、カッセル、フランクフルト、ハンブルクの歌劇場で音楽監督や総監督を歴任。ケルン放送響の首席指揮者(1964~1969年)も務め、1977年にウィーン・フィルと共に初来日した。

その初来日時のインタヴュー(『音楽芸術』誌1977年5月号)では、シェーンベルクの《モーゼとアロン》やヘンツェの《若き貴族》などの公演が注目されたが、“現代曲をいつも振っているわけではない”としたうえで、“得意としているのは、ウィーン古典派からシューマンまで。そして、新ウィーン楽派。ジョージ・セルがやったようなベートーヴェン……あれが望みですね”と語っている。77年の時点では、ドホナーニは、クリーヴランド管を指揮したことがなかっただけに、この発言は興味深い。

このコンテンツの続きは、有料会員限定です。
※メルマガ登録のみの方も、ご閲覧には有料会員登録が必要です。

【有料会員登録して続きを読む】こちらよりお申込みください。
【ログインして続きを読む】下記よりログインをお願いいたします。

0
タイトルとURLをコピーしました