音楽評論家・舩木篤也氏による、毎月1日更新の連載「プレルーディウム」。
プレルーディウム(Präludium)とは、ドイツ語で「前奏曲」を意味することば。このコーナーでは1つのクラシック音楽メディアを端緒に、記憶について、「異物」について……自由に思索を巡らせます。
今回登場するのは、サヴァール×ル・コンセール・デ・ナシオンによる、ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》を収めた注目盤です。
ディスク情報
『ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス』
ジョルディ・サヴァール(指揮)
ル・コンセール・デ・ナシオン
ラ・カペラ・ナショナル・デ・カタルーニャ
〈録音:2023年5月〉
[Alia Vox(D)KKC6773]
異物混入
気がつけばもう師走である。ここで一年の締めくくりに「私が選ぶ今年のザ・ベスト・ディスク」について書こう、と考えていた矢先。そのディスクと深いところで通じ合う、思いがけないものに出くわした。音盤のほうがベートーヴェンで、もういっぽうはロッシーニ。ロッシーニの《ウィリアム・テル》を、東京の新国立劇場で観たのである[編注:公演期間は2024年11月20日~11月30日。演目自体が新国立劇場での初上演である]。その最終シーン。圧制者を倒し喜びにわく民衆らが、ハープのアルペジョもすがすがしい管弦楽と、こう歌う。
我らの敬虔なる調べにあわせて、
自由よ、あらたに舞い降りよ、
あらたに統治を始めよ!
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