
旧『レコード芸術』誌の人気企画「リマスター鑑定団」の復活第2弾! “お気に入りの名盤を少しでも良い音で聴きたい”と集まった編集部有志とゲストが、リマスター盤を旧盤と比較して、侃々諤々好き放題に語り合います(前編)。
カラヤンのマーラー:交響曲第6番《悲劇的》の「ザ・オリジナル・ソース」LP

マーラー:交響曲第6番《悲劇的》
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
〈録音:1975年1月,2月,1977年2月,3月〉
[DG (S)4866710(2枚組,海外盤)] LP
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――昨年末に第1回を開催して以来、久しぶりのリマスター鑑定団になります。今回もゲストとして音楽評論家の芳岡正樹さんにお越しいただきました。芳岡さんには比較用にオリジナル初出LPをお持ちいただいております。
最初は、いま何かと話題のドイツ・グラモフォンの「ザ・オリジナル・ソース」から、カラヤンのマーラーの交響曲第6番《悲劇的》を聴いてみたいと思います。
芳岡 1978年のドイツ盤初出LPは、録音技師のギュンター・ヘルマンスがベルリン・フィルハーモニーで収録した8トラックマスターから自らトラックダウンした2トラックマスターよりカッティングされています。8トラックマスターには、金管とコントラバスが左右2トラック、弦楽器(コントラバス抜き)も左右2トラック、パーカッションと木管が1トラックずつ、近接で録音したエコー用トラックが左右2トラック割り振られています。現地にエコーチェンバーがないため、初出LPのマスタリングではハノーファー本社の狭いエコーチェンバーを使ってエコーが加えられました。
今回の「ザ・オリジナル・ソース」では、8トラックマスターからアナログ専用の回路を通しダイレクトにカッティングしたLPです。テープ編集を行わないため、エコーもカッティング時のリアルタイムに加えられました。エコー用トラックの音をテープ・ディレイの手法を使って50ミリ秒ほど遅延させ、エミール・ベルリナー・スタジオの広大な非常階段兼エコーチェンバーに音を流し、その音をマイクで拾って回路に加えています。さらに曲中のカウベルと教会の鐘の音はヘルマンスがエフェクト・テープとして別録りしていたため、これもカッティング時にタイミングを合わせて加えられました。
前回取り上げたブルックナーの交響曲全集を含めて、「ザ・オリジナル・ソース」の再生音が初出LPよりも鮮明かつ質感が高く、響きが豊かなのは、一世代遡ったマスターの音の鮮麗さに加え、こうした細やかな配慮が反映しているようです。
「ザ・オリジナル・ソース」の第1回では、カラヤンのマーラー第5番が発売され、その生々しく力強い音に驚いた人が多く、たちまち売り切れになり、シリアル番号なしで再発売されたほどでした。その好評に応えて今回第6番がリリースされたのだと思います。
――では、ドイツ盤初出LP[2707 106](旧盤)と「ザ・オリジナル・ソース」(新盤)の順番に聴いてみたいと思います。
(第1楽章冒頭を試聴)

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