芸術の秋、マーラーの秋特別企画
芸術の秋、マーラーの秋

マーラー“旬”の話題を追う
交響曲全集、ピリオド楽器、室内アンサンブル版etc.

秋にじっくり聴きたい作曲家と言えば、もちろんマーラー! 「レコード芸術ONLINE」創刊1周年記念特別企画「芸術の秋、マーラーの秋」では、マーラーに関するさまざまなテーマについて、ディスクとともに紹介していきます。
ここでは、「交響曲全集」「ピリオド楽器」「第10番の異稿」「室内アンサンブル版」といった、近年よく耳にする話題について、鈴木淳史さんにまとめていただきました。新情報満載です♪

文:鈴木 淳史(音楽エッセイスト)

最近完成した、または進行中の交響曲全集

◇ヴァンスカ、A.フィッシャー、フェルツ~ここ10年で完成した交響曲全集
世界初となるマーラーの交響曲全集が、バーンスタインとニューヨーク・フィルによって録音されたのは、今から60年ほど前だった。それ以降、数多の全集が生まれた。最近では、オスモ・ヴァンスカとミネソタ管(2016〜22年/BIS)、アダム・フィッシャーとデュッセルドルフ響(2015〜20年/CAvi Music)が、ともにコロナ騒ぎの最中にチクルスをコンプリート。また、今年9月に54歳で急逝したガブリエル・フェルツも、シュトゥットガルト・フィルとドルトムント・フィルを指揮して全集を完成(2007〜19年/Dreyer Gaido)させている。

◇ビシュコフ、ガウデンツ、P.ヤルヴィ~現在進行中の企画あれこれ
現在進行中の企画もある。セミヨン・ビシュコフとチェコ・フィルによるプロジェクト(PentaTone)もその一つ(①)。チェコ・フィルにとってはノイマン以来の全集録音で、このオーケストラのもつ音色を生かしながら、オーケストレーションの妙味を引き出した演奏だ。これまで第1〜5番までリリース済み。

かつてマーラー・チクルスといえば、予算規模の大きいオーケストラの特権事項のようなものだった。しかし、時代は変わった。そうしたことに挑戦する地方オーケストラも出てきた。ドイツ中部、テューリンゲン州に本拠地を構えるイエナ・フィル(②)は音楽監督のジモン・ガウデンツとともに全集録音を着実に進めている。端正でしなやかなスタイルのマーラーだ。
アルバムには、それぞれ2つの交響曲を収録。ユニークなのは、その冒頭、曲間にマーラー作品へのオマージュとなるスイスの作曲家スカルタッツィーニによる委嘱作品を配置。2つの交響曲を繋ぐ、前奏曲や間奏曲として機能させる。第2番や第3番、第6番と第7番、はたまた第8番と第9番といった大曲をドッキングさせ、さらに巨大化させるという試みか。大きいことはいいこと、と思いたい。

パーヴォ・ヤルヴィとチューリヒ・トーンハレ管弦楽団(③)によるチクルスは始まったばかり。第5番に続き、第1番が今月リリースされる。サバサバと響きを整理していく指揮者と潤いのあるトーンハレ・サウンドの組み合わせが功を奏し、明確な輪郭を与えたフレーズをしっとりと繊細に歌わせる。

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