ベルリン・フィル・デビューはもとより、ヨーロッパでの活躍が目覚ましい山田和樹。彼の音楽的な拠点の一つが横浜シンフォニエッタだ。1998年に東京藝術大学在学中の山田が仲間たちと創設(当時の名称はトマトフィルハーモニー管弦楽団。2005年に現在の名称に改称)。本家フランスのラ・フォル・ジュルネ音楽祭に日本の楽団として初めて招聘されたのをはじめ、モスクワのロストロポーヴィチ国際音楽祭など海外の著名な音楽祭にも度々招聘されている。山田は多忙を極める今も音楽監督の任にある。
その山田和樹&横浜シンフォニエッタが2015年と2018年にアレクサンドル・クニャーゼフと共演したショスタコーヴィチのチェロ協奏曲集が世界発売となる。レーベルは、ランデヴー・ウィズ・マルタ・アルゲリッチなどをリリースしているAvanti Classic。クニャーゼフのたっての望みだと言う。

曲に込められた苦悩や作曲家の複雑な側面を引き出したクニャーゼフと、活気に満ちた指揮で管弦楽のテクスチャに鮮やかな解釈を加えた山田和樹という2人の相互作用により、これらの作品が持つ暗い激情と豊かな音楽性という二面性を見事に捉えた、強い説得力を持つ演奏に仕上がっている。横浜シンフォニエッタのメンバーに当時の記憶を振り返ってもらった。

山田和樹とクニャーゼフ
(c)横浜シンフォニエッタ[2018年2月17日の演奏会より](以下同)
「アレクサンドル・クニャーゼフ。彼に初めて間近で接した時の私の印象は、どこか寂しげで物静かな佇まいの人、であった。 しかし、ひとたびチェロを構えると、その印象は変容する。楽器を抱える彼の背中から炎が立ち上るような気迫に満ちた強音に息を呑み、また周囲のものをすべて凍り付かせるような、無音を超えた静寂を奏でる弱音に鳥肌が立った。 彼が凄まじい演奏をする音楽家であることは、それまでに聴いてきた数々の録音からも、そして彼の招聘を強く推し進めた音楽監督・山田和樹の言葉からも、理解し、覚悟をしていたつもりだった。 だが実際に同じ空間で音を交わしたとき、その想像はあっけなく超えられた。」

リハーサル
「チェロの音色はしばしば人の声に喩えられる。だが音は言葉を持たないため、本来きわめて抽象的なものであり、聴き手によって無数の解釈が許される。 それでも、クニャーゼフの演奏には、そうした前提を越えて迫ってくるものがあった。そこにあったのは、揺るぎない「真実」だった。彼との共演は、音楽というより、ひとつのドキュメンタリーとして、私の心に刻まれている。 横浜シンフォニエッタの一奏者として体験した、あの壮絶な共演。その記憶が、あらためてCDという形で残されることを、心から光栄に思う。 私たち演奏者が現場で感じたドキュメンタリーを、ぜひ多くの方と共有したい。」

演奏を終えて
文:横浜シンフォニエッタ ヴァイオリン奏者 長岡聡季

ショスタコーヴィチ: チェロ協奏曲第1番、第2番
アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)
山田和樹(指揮)横浜シンフォニエッタ
録音: 2015年1月29日(第1番)、2018年2月18日(第2番) 横浜フィリアホールでのライヴ収録。第1番のみ拍手入り
国内仕様盤:Avanti Classic(D)NYCX-10565
【試聴・購入はこちら】
企画・制作:ナクソス・ジャパン

