柴田南雄『名演奏のディスコロジー』 #4

第4回(1976年4月号)ズーカーマンのブラームス/Vnソナタ

復刻!柴田南雄の名連載レコ芸アーカイブ
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MG8137
ズーカーマンとダニエル・バレンボイムによる『ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ&ヴィオラ・ソナタ全集』[ポリドール]ジャケット

柴田南雄の連載、「名演奏のディスコロジー」の再掲載3回目です。
『レコード芸術』1976年1月号から77年12月号まで、計22回続いた本連載の第4回の主題は、ピンカス・ズーカーマンとダニエル・バレンボイムの『ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ&ヴィオラ・ソナタ全集』。その登場の驚きを端緒に、商業主義の台頭と情報化が進む社会において、本楽曲の演奏から失われゆく「ドイツ」と「室内楽」の要素について、論が展開していきます。

※「ズーカーマン」は「ズッカーマン」と表記されることも少なくないですが、本稿では前者を採用しています。
※「ポール・ズーコフスキー」を「ポール・ズコフスキー」に変えるなど、文中に登場する一部人名を現代的表記にあらためています。
※そのほかの文中の記述・事実関係などはオリジナルのまま再録しています。(今日では不適切と思われる表現も含まれますが、原典を尊重してそのまま掲載いたします)
※文中レコード番号・表記・事実関係などは連載当時のまま再録しています。

ズーカーマンとバレンボイムがブラームスのヴァイオリン・ソナタとヴィオラ・ソナタの全5曲(正確に言えば3曲+2曲)を録音した新しいレコード(ポリドール MG8137~9)を手にした時、ある驚きの念を禁じ得なかった。だがそれはけっして、この二人がブラームスに挑戦したからではない。

ズーカーマンより若く、むしろ現代曲のスペシャリストの観のあるポール・ズコフスキーさえ、最近ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲を日本で録音している。(ビクターSJX7536~7)若い世代がロマン派をとり上げるのは一種の流行でさえある。だからズーカーマンがブラームスと取り組んだこと、そのことには、少しの異和感もない。それに、この二人はすでにベートーヴェンの全10曲のヴァイオリン・ソナタのアルバムを出していた。(エンジェル EAA90061~5)

ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ全集
〔ヴァイオリン・ソナタ第1番~第10番〕

ピンカス・ズーカーマン(vn)ダニエル・バレンボイム(p)
〈録音:1969~73年〉
[エンジェル(S)EAA90061~5(5枚組)]LP ※現在取扱なし
[Warner Classics]配信
※ジャケ写とリンクは後者のもの

【メーカー商品ページはこちら

わたくしが、意外感を持ったのは、このレコードがポリドール=ドイツ・グラモフォン盤であったからだ。それは一つには、上記のベートーヴェン全集がEMI→エンジェル盤だったので、おや、今度はドイツ・グラモフォンか、という反応も起ったのだが、同じアーティストがいろいろなレーベルに録音するのは少しも珍しいことではない。だから、わたくしの「おや?」の焦点はも少し別の所にしばられる。

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