レコ芸フォト・アーカイブレコ芸アーカイブ
『レコ芸』が目撃した名演奏家たち――臨時編集後記

「レコ芸フォト・アーカイブ」スピンオフ編
オペラの銘盤ジャケ写アルバム20連発(編集部 選)

好評配信中の『レコ芸フォト・アーカイブ』では、半世紀前(=1975年)前後の日本のクラシック界の活況を、写真を通して振り返っていますが、最新の第7回では「オペラ特別編」としてスター歌手たちのアップ写真を蔵出しいたしました。連載に登場したのは、カルロ・ベルゴンツィ(T)レナータ・スコット(S)アントニエッタ・ステッラ(S)マリオ・デル・モナコ(T)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)エディト・マティス(S)ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(S)の7人。1960年代~80年代は、オペラのレコードの一大ラッシュ時代とも言え、多くの銘盤が生まれています。連載本編ではナビゲーターの芳岡正樹氏に、来日時の演目に沿ってCDをセレクトいただきましたが、今回その追補版として、名歌手たちをフィーチャーした目にも綾なジャケット20点を厳選してみました。※取り上げる多くのLP/CDは現在廃盤となっており、掲載のジャケット写真のディスクには入手困難なものも含まれます。

トップバッターはカルロ・ベルゴンツィ(1924~2014)。本編では、1967年の第5次NHKイタリア歌劇団《ランメルモールのルチア》エドガルド役を取り上げたが、やはりベルゴンツィの本分はヴェルディ。《ヴェルディ》ラダメス(ジャケットはDeccaのアリア集より)《トロヴァトーレ》マンリーコ[DG]、そして《運命の力》ドン・アルヴァーロ[EMI/Warner]は十八番のレパートリー。もちろんプッチーニも素晴らしく、《ボエーム》での楷書体のロドルフォ(左下[Sony])も必聴。

その1967年NHKイタリア歌劇団《ルチア》でヒロイン役を務めたのが、レナータ・スコット(1934~2023)。スコットと言えば《ルチア》の他に、ヴェルディ《椿姫》《リゴレット》[DG]やプッチーニ《蝶々夫人》[EMI/Warner]での熱唱が真っ先に思い浮かぶが、ここでは《トスカ》(左;EMI/Warner)と《ノルマ》(右;Sony)での美しいジャケットを選んでみた。

やはりNHKイタリア歌劇団で来日を重ね、名唱を聴かせてくれたアントニエッタ・ステッラ(1929~2022)は、スコットやテバルディに比べると日本では少々一般的知名度は落ちるかもしれないが、堂々たるイタリアの本格派プリマ。連載本編ではオフショットを掲載したが、ここでは彼女の多くの全曲盤の中から十八番《トスカ》《ボエーム》[Philips/Decca]に加え、隠れた銘盤ドニゼッティ《シャムニーのリンダ》(左上[Philips/Decca])をご紹介。

マリオ・デル・モナコ(1915~1982)が、NHKイタリア歌劇団で3度(1959年、1961年、1963年)来日して、オテッロ、ドン・ホセ(カルメン)、アンドレア・シェニエ、カニオ(道化師)といった十八番中の十八番を、日本の聴衆の前で次々披露してくれたのは、まさに毎回が「歴史的事件」だったようにも思えるが、それぞれの役のスタジオ録音のレコードも、今もって鉄板中の鉄板となっている(左下のホセの写真のみアリア集のレコードより[以上すべてDecca])。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(1925~2012)のドイツ(語)オペラ録音に関しては、好評連載中の「週刊フィッシャー=ディースカウ」で今後続々展開予定なので、ぜひそちらもご参照いただきたく、ここでは彼のイタリア(語)オペラの銘盤を挙げてみた。モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》のドン・アルフォンソ役(左上[DG])と、ヴェルディからはシェイクスピア物2題《マクベス》[Decca]と《ファルスタッフ》[Sony]を。

まさに「チャーミング!」という形容がそのまま当てはまるソプラノ歌手、エディト・マティス(1938~2025)。《バスティアンとバスティエンヌ》のジャケット(右[BASF/DG])は、作品こそちょっと渋めだが、彼女の最高の表情を捉えた一枚では。モーツァルト《フィガロの結婚》のスザンナはマティスの当たり役だが、ベーム指揮の銘盤(ハイライト盤[DG])のちょっと珍しいジャケットでは、全登場人物の切り絵が楽しい。

最後は、ロシアの大プリマドンナ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(1926~2012)。チャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》タチヤーナ(1970年来日演目)と《スペードの女王》リーザは彼女の2大当たり役だが、ここではプッチーニ《トスカ》[DG]と、お国物のショスタコーヴィチ《ムツェンスクのマクベス夫人》[EMI/Warner]のレコードを。いずれも夫君ロストロポーヴィチの指揮による銘盤。

選・文=編集部(Y.F.)

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