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【速報】ラトルとバイエルン放送響がマーラーの第7番を本拠でライヴ収録!

11月下旬に初の来日公演を控えるサー・サイモン・ラトルとバイエルン放送交響楽団のコンビが、11月7日と8日に本拠地ミュンヘンで日本公演でも演奏するマーラーの交響曲第7番を含むプログラムを披露した。大成功を収めた演奏はライヴ収録され、日本先行で発売予定だ。11月8日の公演を聴いた現地批評家からのレポートが届いたので掲載する。

ラトルとバイエルン放送響 Photo: BR Astrid Ackermann

サイモン・ラトルがバーミンガムでマーラーの交響曲第7番を初めて指揮したのは、まだナイトの称号を授与される前の1980年のことだ。当時としては大胆なことだったろう。オーケストラはマーラーの音楽に今のようには馴染んでいなかったため、非常に困難な挑戦であったに違いない。今日でも音楽家たちはこの交響曲を有名な第2番や第9番よりも下に見る傾向がある。

ラトルの見解は明らかに違う。彼はこの交響曲を何度も取り上げ、バーミンガム市交響楽団のツアー・プログラムに載せてきた。1990年代にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、1991年にはボストン交響楽団で指揮し、もちろんベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者時代にも演奏した。

ラトルがこの作品に強い愛着を持っているのには理由がある。第6番や第9番のように有機的に構築されていれば建築的なセンスがものをいうが、この曲は違う。もっと過激で、ほとんど各小節に驚きが待っているような作品だ。壮大なハ長調のフィナーレを除けば調性は曖昧で、連続性もそれほど重視されていない。「夜の歌」という副題はマーラーに由来するものではなく、音楽を矮小化して聴衆に「わかりやすい」表題音楽であると思わせてしまいがちだ。オーケストラからリヒャルト・シュトラウスのような豊かな響きを引き出すことに喜びを感じる指揮者よりも、ピエール・ブーレーズのように現代音楽に優れた指揮者達の方がこの作品を頻繁に演奏するのは驚くにあたらない。

ミュンヘンに着任以来、ラトルはマーラーの作品をいくつか取り上げてきた。新しい録音のシリーズになるようだ。第9番や第6番の演奏時と同じように、ステージの上には無数のマイクが設置されていた。ラトルは第7番を2度録音している。1990年代にバーミンガム市交響楽団と録音したものと、2021年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と録音したものだが、後者では演奏者が作品に十分なやり甲斐を感じていないのか、やや上品に過ぎるように思う。いずれにせよ、昨日(注11月8日)の演奏から判断すれば特別な録音が期待できそうだ。

Photo: BR Astrid Ackermann

テンポは以前の演奏よりもやや速めだったが、オーケストラの色彩とアーティキュレーションが損なわれることはなかった。第1楽章冒頭の和声的なテクスチャーは豊かで深みがあったが、これにはテナーホルンのルーカス・ガスナーの貢献が大きい。終盤の再現部直前の絶妙なアッチェレランドは非常に効果的だった。第1の「夜の音楽」はエッジの効いた演奏で、クラリネットのシュテファン・シリングとホルンのパスカル・ドイバーのデュオは素晴らしかった。スケルツォは不気味な雰囲気で、ベテランのヘルマン・メニングハウスのヴィオラ・ソロも見事だった。第2の「夜の音楽」はコンサートマスターのラドスワフ・ショルツが脚光を浴び、弦楽器群が広大なダイナミックレンジを見せつけた。マーラーがコントラバスのパートを実にうまく書いていることをラトルは何度も意識させてくれたし、演奏者たちも多種多様な表現の見せ場が来る度に楽しんでいるようだった。バイエルンだけに、賑やかな喜びに溢れたマイスタージンガー風のロンド・フィナーレに、私たちはオクトーバーフェストが終わってからまだ1ヶ月しか経っていないことを思い出したのだった。

交響曲に先立って演奏されたハリソン・バートウィスル作曲の「サイモンへの贈り物2018」は、木管、金管、打楽器のための興味深い作品だった。サー・サイモンのために書かれたこの短い作品で、バートウィスルは、25人の音楽家を使ってどれだけ多彩なスタイルで作曲できるかを見せてくれる。これは思いがけない音響的な広がりを持つマーラー作品へのプレリュードとしてうってつけだ。

マーラーでは、ラトルは譜面を見ることなく指揮し、この作品を完全に身に着けていることを見せつけた。聴衆の反応は素晴らしく、長く熱烈な拍手が贈られた。いつもは見事なソロを聴かせた演奏者を起立させるラトルだが、今回は彼らの所まで行って握手をしていた。演奏会の後で地下鉄を待つ間、そこで出会った何人もの演奏者が実に楽しい演奏だったと語ってくれた。

ラトルとバイエルン放送交響楽団はまもなくアジア・ツアーに出発し、このプログラムも演奏される。これは必聴だ。卓越したオーケストラが、40年以上にも及ぶ演奏経験を持つ指揮者と共に傑作を極めようとする機会なんて、そうそうあるものではない。

〔2024年11月8日、ミュンヘン、イザールフィルハーモニー・イン・ガスタイクHP8〕

アントワーヌ・レヴィ=ルボワイエ
Antoine Lévy-Leboyer

マーラー:交響曲 第7番 ホ短調「夜の歌」

サー・サイモン・ラトル指揮バイエルン放送交響楽団
〈録音:2024年11月6-8日 ミュンヘン、イザールフィルハーモニー・イン・ガスタイクHP8(ライヴ)〉
[BR KLASSIK 900225JP](CD)オープン価格
初回限定生産盤・日本語解説付
2024年12月13日発売予定

サー・サイモン・ラトル指揮、バイエルン放送交響楽団 日本公演

*はマーラーの第7番を演奏
2024/11/23(土・祝) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール*
2024/11/24(日) ミューザ川崎シンフォニーホール
2024/11/26(火) サントリーホール
2024/11/27(水) サントリーホール
2024/11/28(木) NHKホール (NHK音楽祭2024)*
2024/11/29(金) 愛知県芸術劇場 コンサートホール*

企画・制作:ナクソス・ジャパン

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