多大なるご支援のもとに『レコード芸術』が復活
2024年10月1日、『レコード芸術』が、WEBメディアとして復活いたします。1952年の創刊以来、70余年にわたってご愛顧いただいた『レコード芸術』誌(以下、『旧レコ芸』)が昨年6月を持って休刊して以来、ご支援頂いた皆様には大変長らくお待たせをいたしました。
まず、この度の『レコード芸術ONLINE』(以下、『レコ芸ONLINE』)の創刊にあたっては、皆様のご支援がなければ、絶対に実現し得なかった点を、心からの感謝とともに特筆大書したいと思います。出版業界を取り巻く厳しい情勢のなか、専門誌の休刊が相次ぐ昨今ですが、一度休刊した雑誌がクラウドファンディングによって(メディアは変われど)復活したケースは、今回の『レコ芸ONLINE』が初めてではないでしょうか。それだけに皆様のレコ芸に対するひとかたならぬ思いをひしひしと感じるとともに、ご期待に応えるメディアを作り上げていかなければならない責任の重さを痛感しております。改めてこの度のクラウドファンディングによるご支援に篤く御礼を申し上げます。
伝統と革新のWEBメディア
さて、『レコ芸ONLINE』は、『旧レコ芸』の良き伝統を継承しながらも、新しい方向性を目指すWEBメディアとしてスタートを切りたいと思います。その方向性は以下の点に集約されます。
・クラシック音楽メディアの「情報の集まる場所」の復活
・クラシック音楽メディアの「批評の場」を維持する
・『旧レコ芸』の潤沢な遺産を活用する
・新しい読者に向けて、クラシック音楽のより深い楽しみ方を伝える
・現代の多様な「音楽の聴き方」に即したメディアとして最適化する
・WEBメディアならではの双方向性を活かした読者参加型メディアを作る
『旧レコ芸』には、情報誌と批評誌という二つの側面がありました。休刊によって失われたクラシック音楽メディアの情報を集約する場を再び作り、ここを訪れれば新譜情報だけでなく、クラシック音楽の“いま”が分かるポータルサイトを目指しています。
また、クラシック音楽にとって“不可欠”と確信する「批評の場」を維持し、過去の名盤を後世に伝えると同時に、現代のアーティストによる最新録音を、単なる「推し」ではなく、音楽史や演奏史の観点から正しく評価できる場を提供していきたいと考えています。
『旧レコ芸』の遺産は、そのままにしておくには惜しい宝の山です。『旧レコ芸』時代から蓄積された「クラシック・データ資料館」の約15万件に及ぶディスク情報はすべて『レコ芸ONLINE』が引き継ぎます。さらに、『旧レコ芸』のバックナンバーから厳選した記事も順次アップロードしていく予定です。皆様からのリクエストも受け付けます。
『レコ芸ONLINE』は、『旧レコ芸』を愛してくださった皆様のご支援によりスタートできましたが、新しい読者の開拓にも積極的に挑戦していきたいと考えています。無料でご覧いただける「最新盤レビュー」や「インタビュー」などの充実した記事を通じて、クラシック音楽に少しでも関心をお持ちの方々に、しっかりとした背景知識を得ることで、クラシック音楽の楽しみは何倍にも広がることをお伝えできればと考えています。
『レコ芸ONLINE』はWEBメディアという特性を最大限活かすことを目標にしています。記事で紹介する音源はすべてストリーミングサイトやCD購入サイトのリンクがあり、読んで聴きたいと思ったらすぐに行動に移せます。
また、『レコ芸ONLINE』ではWEBメディアならでは“双方向性”を活かした「読者参加型」を重視します。その一つの試みとして、すべての記事にコメント機能を設けました。記事に対する感想や意見、また投稿者同士の議論の場として機能することを企図しています(コメント機能は有料会員の方のみ投稿・閲覧が出来ます。また投稿は編集部による確認の後公開されます)。さらに、オンライン上だけでなく、リアルイベントにも力を入れ、毎月1回、音楽之友社において「レコ芸特別講座」を開催いたします。レコ芸の人気執筆陣と実際に会って、交流や意見交換をしていただけます。
以上のように『レコ芸ONLINE』は、『旧レコ芸』の伝統の継承と共に、新しさも大胆に取り入れたメディアとなります。膨大な音源が聴ける今だからこそ、「AIのおすすめ」とは異なる、新たな音楽との出会いを体験頂けましたら幸いです。
『レコード芸術ONLINE』の主要コンテンツ
『レコ芸ONLINE』は、中核となる以下の有料会員コンテンツに加えて「最新盤レビュー」や「インタビュー」など無料記事も充実しているのが特長です。またレコード会社の特設ページでは、レコード会社が提供する新譜情報をなどもご覧いただけます。
■新譜月評
毎月、約100タイトルの批評を総勢30名超の日本を代表する批評家が執筆します。ジャンルは、「オーケストラ曲」「室内楽/器楽曲」「鍵盤曲」「オペラ/声楽曲」「音楽史」「現代曲/ポスト・クラシカル」「その他」の全7部門です。対象となるメディアは、国内盤だけでなく海外盤も含み、加えて有料配信音源(映像)も新たに批評対象となりました。評価基準は「推薦」「準推薦」「無印」の3種類です。
記事は4週にわたって順次公開されていきます。
毎月1日更新=「オーケストラ曲」
毎月8日更新=「室内楽/器楽曲」
毎月15日更新=「鍵盤曲」「オペラ/声楽曲」
毎月22日更新=「現代曲/ポスト・クラシカル」「音楽史」「その他」
■新譜一覧表とクラシック・データ資料館
新譜一覧表では新譜月評で取り上げた全タイトルに加え、国内盤新譜のデータを毎月掲載します。また、クラシック・データ資料館は1960年代後半から『旧レコ芸』の休刊に至るまで、約15万件にのぼるディスク情報を収録した一大データベースです。今後「レコ芸ONLINE」の新譜情報も随時収録されていきます。
■新連載
創刊と同時に読み応えのある新連載がスタートします。まず、毎月1日更新の舩木篤也氏の『プレルーディウム』は、ディスク(音源)を端緒として、ときに音楽の枠を超えて自由な思索が展開される『レコ芸ONLINE』の“顔”とも言える注目連載です。さらに沼野雄司氏(15日更新予定)と、城所孝吉氏(22日更新予定)の連載もスタートします。また2025年からは片山杜秀氏の連載がスタート予定です。どうぞご期待ください!
■復刻!レコ芸アーカイブ
『旧レコ芸』から、厳選した記事をデジタル復刻してお届けします。創刊時は「特捜プロジェクト(アニーバーサリー作曲家)」「柴田南雄の新・レコードつれづれぐさ」「レコ芸・フォトアーカイブ連載」の三本からスタート。今後、読者の皆様のリクエストにも応える形で、コンテンツの充実を図っていきます。
■レコ芸特別講座
「新譜月評」にご執筆いただいている先生方による講座を開催します。講座は対面だけでなくオンラインでも実況中継します。また後日、講座の内容は記事として公開いたします(初年度はクラウドファンディングのリターンとして開催。2年目以降、一般会員も参加可能になります)。
これらの記事はすべてアーカイブとして保存され、いつでもご覧いただくことが出来ます。
今後、読み応えのある記事をどんどんラインナップしていく予定ですので、ぜひご期待ください。
『レコード芸術ONLINE』編集長
清本 真章