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柴田南雄『新・レコードつれづれぐさ』
第一回(1983年7月号)マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調

『レコード芸術』で長らく健筆を振るわれた柴田南雄氏による、連載『新・レコードつれづれぐさ』( 1983年7月号~84年9月号)の第1回「マーラー/交響曲第5番」をお届けします。次回以降「ヘンデル/合奏協奏曲」「プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲」など、ユニークなラインナップにもご注目ください。
※文中レコード番号・表記・事実関係などは連載当時のまま再録しています。

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おとろへたる末の世とはいへど

この春の東京は、マーラーの〈交響曲第5番〉のちょっとしたラッシュになった。

3 月16日、メータ/イスラエル・フィル、4月21日、マゼール/ヴィーン・フィル、5月19日、アバド/ロンドン・シンフォニー、と外来オーケストラが月1回ずつの割で第5を演奏した。 東京で3か月に3回という高密度は初めてのことだし、今後も滅多に起こることではなかろう。ともかく、これを見てもマーラーが、とくにその第 5 番が今や外来オケのレパートリーの一つの目玉になったことは確かだ。 マーラーと言えば第1と相場が決まっていた時代が、なんと日本では長かったことか。その第 1 よりかなり低い頻度で第 4がつづき、それ以外の交響曲の上演はじつに寥々たるものだった。それが、今や大学生のアマチュア・オケさえも、5番や6番を演奏して楽しむ時代になった。わたくし達が学生時代のベートーヴェンが今や完全にマーラーに置き換えられた。

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